悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
「ん……?なんだか騒がしいわね」
つい、外の喧騒に独り言がもれた。
カバンを肩に更衣室を出ると、植物園のカフェテラスに人だかりができていると気づく。皆、青い顔をして中心部の人物を見つめているらしい。
「カティア!しっかりしろ、カティア!」
華奢な肩を掴んで声をかけているのはグレイソンだ。腕に抱かれるカティアはぐったりとしている。
ただごとではない雰囲気に息を呑むと、床に割れたティーカップが散乱しているのが目に入った。
「カティアさんが紅茶を飲んだ瞬間、苦しそうに顔を歪めて倒れたそうよ」
「まさか、毒が入っていたのか」
「いったい、誰が?」
ざわざわとそんな声が飛び交い、皆、犯人探しに躍起だ。
「エスターがやったんじゃないのか?」
思いもよらぬセリフが聞こえて、呼吸が止まった。人だかりが多すぎて誰が口にしたのか特定できないが、名指しされたらたまらない。
それを聞いた人々は、口を揃えてヒートアップする。