悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 頭痛が始まった。

 五日以内に解毒薬を調合しろと命じられた次は、二週間以内にダンスをマスターしろだって?

 婚約者のフリだけでいいって言ったはずよね?厳しすぎるわ。


「あの、ふたりは愛し合っているんですよね?全然そういう雰囲気を感じませんけど」


 レンテオさんのセリフが心に突き刺さった。形だけの関係だとすぐ見破られてしまう。

 彼は陛下の忠臣であり騎士団長なのだから、真実を伝えてもいいはずだ。

 しかし、説明しようとした瞬間、背後が伸びてきた長い指が私の口を封じた。口を押さえたまま片手で抱き寄せられて、身動きすらとれない。


「ずいぶんと不躾(ぶしつけ)だな、レンテオ。どれほどの関係か知りたいか?」


 低く艶のある声に胸が音を立てる。口を塞ぐ手と逆の腕が腰を抱き、体が震えた。

 ぎくりとしたレンテオさんは、様々な考えを巡らせたのだろう。少し気まずそうに頭を下げる。


「申し訳ございません。出過ぎたことを口にしました。とりあえず、出席の意向を大臣に伝えておきます」


 軽やかな風のように出て行く彼の姿が消えると、手が放された。


「あんな誤解を招く言い方はやめてください」

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