悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
自由になった口から、つい本音がもれる。
「誤解?」
「婚約者はフリだと、なぜ伝えないんですか?それに、急に深い関係を匂わせる仕草をされると戸惑います」
「厄介ごとに巻き込む人物は最小限の方がいい。計画をうまく運ぶためにもな」
傾国の美女にうつつを抜かしていると見せかけて、それが仮初めの寵愛であるという真実を知るのは私だけだ。
半年前から私が城に来るまでの間は、国境の整備や現地視察を理由にしていたと陛下から聞いた。
めったに私と陛下は二人で過ごしていないのに、ボナさんをはじめとした使用人は、なぜか婚約者という嘘を信じ込んでいる。
全てが腑に落ちない。
「練習には、城のホールを自由に使え」
ベルナルド様はそう言い残して立ち去った。
行動範囲が広まっても、まったく自由になれた気がしない。それでも、ここに置いてもらっている以上はやるしかないのだろう。
「頑張るのよ、エスター。きっとやれるわ」
暗示のごとく呟いて、握りしめた拳を胸に当てた。