悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
戸惑っていると、スマートに手を差し出された。
「もしかして、練習に付き合ってくださるんですか?」
「愚問だな。お前ひとりに背負わせはしない」
そう言ってくれるとは思わなかった。
陛下にとっても舞踏会は予期せぬイベントで、私が半ば無理やり付き合わさる流れになったのを少しは気にしてくれているのかな。
誘われるがままに手のひらを重ねると、腰に手が回された。流れるようにステップを踏んでいく。
エスコートは強引ではない。動きもゆっくりで、実力をみながらこちらに合わせてくれているようだ。
「舞踏会は全て左回りだ。力を抜いて、俺に身を任せろ」
「力を、抜く?」
「硬すぎだ。緊張しているのか」
あたりまえでしょう。心臓がドクドクと鳴ってうるさいくらい。だって……。
「わっ!ご、ごめんなさい」
勢いよく足を踏みつけた。まずい、怒られる。
痛みのせいか、一瞬眉を動かす彼に背筋が凍るものの、怒号は飛んでこない。