悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


「ある程度は覚悟している。ステップだけに集中しろ」


 なんだか優しい。てっきり、強引に振り回す踊り方をすると構えていたのに。言葉数は少ないけれど、呼吸も速さも全て合わせてくれている。

 難しいステップに足がもつれて倒れ込んでも、さらに勢いよく踏みつけても、彼は不満を口にしない。

 レディーファーストって、こんな感じかしら?とても大切にされている気分になる。


「ベルナルド様、お上手ですね」

「それなりに場数を踏んできただけだ」


 なるほど。王族ともなれば、舞踏会にお呼ばれする機会も多いのだろう。

 彼はなにをやらせても完璧にこなしてしまうイメージがある。私のように上手くできなくて落ち込んだり、緊張したりはしないんだろうな。

 社交ダンスは想像よりずっと距離が近かった。顔を上げたら間近に綺麗な顔があるし、腰を支える腕が力強くてドキドキする。

 ベルナルド様と、こんなに近づいたのははじめて。


< 58 / 217 >

この作品をシェア

pagetop