悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
モフモフの尻尾を撫でながら、本音がこぼれた。
「ベルナルド様を怒らせちゃった。一緒に練習してくれて嬉しかったのに」
普段は閉じているはずの黄金の瞳は、まっすぐこちらを見ている。
「実はね、舞踏会にあまりいい思い出がないんだ。学生の頃のプロム前に、同級生の男の子たちが『エスターとは踊りたくない』って言っているのが耳に入って、せっかく練習したのに結局披露せずに帰っちゃったの」
『高嶺の花には近づけない。ステップをミスしたらキツく睨まれそうだ。申し込んでもバッサリ振られて恥をかくだけだぜ』
『周りからの視線も痛そうだよな。サリーとかどうだ?可愛らしくて大人しそうで、やっぱりああいう慣れてなさそうな子がいいよ』
男の子も、カッコよくエスコートしたいプライドがあったのだろう。ダンスの技術はマナー同様であり、相手に合わせて踊れるのが必須のたしなみだった。
ペアの悪口を言ったり、誘いを断ったりしないのに。外見だけが取り柄のキツい性格だと勘違いされて、誰も手を取ってくれない。
華やかなドレスを着て、プロムで踊るのは憧れだった。その夢が叶わなかったのは、臆病な私が逃げ出したからだ。