悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
男の子たちの陰口を聞いたとき、ショックで泣きそうだった。当日、本当に誰とも踊れなかったらと想像しただけで苦しくて、プロムに出る勇気が持てなかったのだ。
「ベルナルド様が魅力的な人だからかもしれないけど、あんなに男の人とくっついて踊るなんて初めてで、どうしても緊張しちゃう」
彼はきっと、失敗しても咎めない。ハッキリとした物言いだけど強引ではないし、こちらを気づかう余裕もある。
原因はひとつ。私が異性として意識しているからだ。
「ダンスごときで、って思った?それでも、上手くできなかったらどうしようって不安が消えない」
モフモフの尻尾が腕に巻きついた。温かくて柔らかい感触に、笑みがこぼれる。
「本当に優しい子ね。聞いてくれてありがとう。なんだか、すっきりしたわ」
ラヴィスは、安心したように目を閉じて眠りにつく。日向ぼっこをする姿に癒されて、パワーがみなぎった。
よし、仕事として割り切ろう。変にベルナルド様を意識しすぎないと心に決めるべきだ。当日踊れなくて、彼に恥をかかせるほうが恐ろしい。
深呼吸をして気持ちを切り替えた私に、ラヴィスは小さく喉を鳴らしていた。