悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 爆弾発言が飛んできた。まさか、ずっとこのまま?

 恥ずかしさのあまり振り返って離れようとするが、腰に回った手に引き寄せられ、後ろから抱きしめられてしまう。


「あきらめろ。獣は獲物を逃さない」

「こんなの、荒療治すぎます」


 今、なにが起こっている?

 状況を整理すると、ふたりきりのホールで陛下の膝に乗り、バックハグで密着している。社交ダンスよりもはるかに近い距離だ。

 まるで本物の婚約者同士みたい。使用人に見られたら、恥ずかしさのあまりこの場で死にたくなるほどである。

 どうして突然こんなことをするんだろう。冷静で無駄を嫌う彼は、からかっているわけではなさそうだ。

 この距離に慣れればたしかにダンスでは緊張しないだろうが、心臓が持たない。シャツ越しの体温も、回された腕のたくましさも、背中から聞こえる呼吸もすべてが思考をかき乱す。

 こちらが真っ赤になっているのに気づいた彼は、不思議そうに尋ねた。

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