悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


「なぜ恥ずかしがる?あの獣の前では、頭を撫でたり抱きついたり、好き勝手やっているだろう」

「ラヴィスのことをおっしゃっているのですか?ベルナルド様とは全然違います。ペットのように可愛がっているんです」


 柔らかい毛並みとモフモフの尻尾、いい匂いのするラヴィスに抱きつくのとはわけが違う。

 ベルナルド様は筋肉質で胸板が厚いし、どこに伸びるかわからない手も、低く艶のある声も男らしくてドキドキする。

 ただ、ふわりと香る匂いだけはどこか似ている。爽やかだけど、甘くて落ち着く。ずっと近くにいたくなる。


「もう大丈夫です。な、慣れました」

「耳まで赤く染めて、説得力がないな。まぁいい、毎日すれば徐々に慣れる」


 宣言通り、ダンス特訓のたびにハグをする時間ができた。こちらの反応はさらりと受け流され、身動きを封じられてしまう。

 荒療治が逆効果だと気づかないのね。婚約者のフリを命じられて、お互いに特別な感情はないとわかりきっていても、毎日躊躇なく抱きしめられたら勘違いしそうになる。

 そして、昼休みのたびに「あの人は女心がわかってない」とラヴィスに泣きついた。

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