悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
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「お迎えにあがりました、陛下。さぁ、馬車へどうぞ」


 騎士の正装に身を包み、レンテオさんが四輪馬車の扉を開けた。ついに舞踏会当日となり、夜の開場に合わせて移動を始める。

 私の隣に並ぶのは、ホワイトタイ姿のベルナルド様だ。

 黒いエナメル靴と白い手袋は、普段の王族の正装とはまた違った魅力がある。艶のある銀髪を整えて前髪をあげると、美しい造形の顔がより際立っていた。


「エスターちゃん、そのドレスすごく似合ってるね。本物のお姫さまみたい」


 レンテオさんに褒められて視線を落とすと、プリンセスラインのロングドレスが目に入った。

 ベルナルド様が用意してくれたのは光沢のあるシルクで作られた深紅のドレスで、裾と胸元に豪華なビジューやパールがほどこされている。

 バストからウエストまではぴったりと体に沿うタイトなラインだが、そこから裾へふわりとボリュームがあり、可愛らしいシルエットだ。

 シックで濃い赤は大人な印象だが華やかで、袖を通すとワクワクした。ざっくり開いた背中が少し恥ずかしいが、これは仕事の一環なので仕方がない。

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