悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
高圧的な態度に、負けじと言い返す。
「お好きにどうぞ。気がすむまで調べれば?」
もちろん、コートもズボンも、ポケットの中はなにも入っていない。証拠が出てくるはずがない。
そう、自信を持っていた。
「エスターさん。これはなにかしら?」
突然、カバンを調べていたひとりが声を上げた。突きつけられたのは空の小瓶だ。見覚えがない。
しかし、そのラベルに綴られていた文字に体が硬直する。
「“ルカロ草”のラベル……!猛毒よ!」
「恐ろしい。まさか、本当にエスターだったのか」
まさか!
目の前の出来事が信じられなかった。ルカロ草は、呼吸困難を引き起こし、重篤な場合は死に至るほど毒性の強い植物だ。
研究材料としてエキスが保管してあるが、劇物の棚はしっかりと鍵をかけており、担当者や植物園の管理人しか触れないはずである。
「知りません!私の持ち物じゃないわ」
「今さら言い逃れするつもり?ここにいる全員が証人なのよ?」