悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 はっとして辺りを見回すと、町中の人々から嫌悪に尖った視線が向けられていた。全身の体温が下がる。

 嘘でしょう。どうして?今日は朝から温室にこもって花の世話をしていたし、偶然小瓶がカバンに入るはずがない。

 そのとき、グレイソンに抱かれているカティアと目が合った。彼の胸に顔をうずめたカティアの唇に不敵な笑みが浮かぶ。

 瞬時に、脳裏に更衣室ですれ違った女性たちの姿がよぎった。

 あのとき、私のロッカーがあさられていた。それに、カティアなら植物園の経営者であるグレイソンの父に取り入って、劇物の棚の鍵をこっそり持ち出すことも可能だ。

 倒れている彼女は意識がはっきりしていて、呼吸も元に戻っている。小瓶まるまる毒を飲んだにしては、症状が軽い。

 はめられた……!


「この人殺し!こんな悪女、町から追い出せ!」

「あのカティアを狙うなんて、正気とは思えない。権力者の娘に手をかけたら、こっちが殺されちまうよ」


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