追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
木でできたカウンターで受付のドワーフに声をかけると、部屋の奥へ通された。

ドワーフといえば、髭もじゃのお爺さんのイメージだけれど、案内してくれたのは子供くらいの背丈で浅黒い肌の女性。ドワーフは全体的に小柄な種族なのだそう。

「ようこそ、お越しくださいました。聖女様、歓迎いたします。さっそくですが、担当の者を連れてまいりますね。新種の調理道具というのは、なかなか変わったご要望ですけれど……」

女性が奥へ行き、若いドワーフを従えて戻ってくる。

「彼はトルンさん。『熱鍋の郷』という工房の従業員で、金属の加工を得意としています。聖女様の依頼はこちらの工房で担当させていただきますね」

「よろしくお願いします」

トルンは少し不機嫌な表情を浮かべていた。

なんだろう、人間が嫌いとか、揚げ鍋を作るのが難しすぎるとかいう理由かな?

「聖女様からの依頼だというから、てっきり武器を作るのかと思ったが?」

「いいえ、調理道具をお願いしたいんです。揚げ物に特化した鍋なんですけど」

「くそっ、うちが新興の工房だからって、面倒ごとを押しつけやがって」

彼は、揚げ鍋の依頼を受けるのがいやなのだろうか。調理道具よりも武器を作りたそうな雰囲気がムンムンする。

「このドワーフ、生意気っすね! 締めましょうか!!」

「こらこらこら、いきなり暴力は駄目ですよ。テオ、落ち着いて」

テオを宥めた私は、トルンに目を移す。

トルンも文句はあるが争う気はないらしく、工房へと私たちを案内した。
< 127 / 211 >

この作品をシェア

pagetop