追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
私は工房の中を見回してみた。

木でできた温かい雰囲気の工房には、あちらこちらにガラクタが積み上がっている。机の上には書類の束が無造作に置かれていた。

従業員が二人だけなので人手が足りず、仕事が滞っているように見える。

「なるほど、なるほど」

私は目の前の机に載っていた紙を手に取った。

「この書類は?」

「販売した武器の集計と、材料の仕入れについて書かれたものだ。全部計算して、そっちの紙に書かなきゃならないんだよ。俺は書類作業なんて大嫌いだが、忘れないように目立つ場所に置いている」

「五日ほど放置されたままだ」

もう一人のドワーフが口を挟むと、トルンが「余計なことは言わなくていい」と大きな声を出す。

要するに、なかなか手が着かず後回しにされていた書類のようだ。

「こちらの書類の計算、私が引き受けましょう。これでも、前世ではフレディオの仕事を手伝っていました」

「なっ、聖女様が!?」

「その代わり、鍋は作ってください」

不便だけれど、『熱鍋の郷』に計算器はない。そろばんすらないので、ペンと紙を手にひたすら自力で計算しなければならなかった。
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