追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「ふんふん。この材料なら、石焼き料理ができますね」

ここはビビンバを作りたいところだけれど、あいにく調味料不足だ。

当たり前だけれど、工房には魔王城ほどの食材がない。

「焼きそばにしましょう!」

中華麺っぽい物体があるし、野菜が豊富で塩漬け肉もある。

「ソースは材料がありそうなので即席で作ります! テオ、手伝っていただけますか?」

「もちろん! 火の調節だけじゃなくて、野菜を刻むのもできるっす!」

頼もしい答えが返ってきたので、私は焼きそば用の野菜をテオに任せてソース作りに専念する。

まだ、この世界には「焼きそばソース」なんて便利なものは普及していないからね。

「ソースを始めとした調味料を流行らせるのもいいかもしれないですね。現在、私が作ったものが魔王城にあるだけですし」

焼きそば用のソースは、串カツ用のソースにちょこっと手を加え辛口にして完成だ。

テオが切ってくれた各種野菜や肉を、熱して油を引いた岩盤の上に並べて炒める。

ジュワーといい音を立てて白い湯気が上がった。

「おっ、いい感じっす! 焼けてきましたね!」

興奮したテオの尻尾が、ブンブンと勢いよく振られている。

「そろそろ麺を入れましょうか」

麺と少量の水を一緒に入れてほぐし、具材と混ぜていく。

「よし!」

いい感じに炒め上がったところで、手作りの焼きそばソースを投入!

すると、工房中に食欲をそそる甘辛い匂いが立ち上る。

「ああ、これこれ。この匂いです……懐かしい」

日本にいた頃は、夜食に焼きそばを作ったこともあった。

「聖女様、すごくおいしそうな匂いっすね! 初めて嗅いだけど」

「さて、そろそろ完成です。テオ、盛り付けを手伝ってください」

「もちろんっす!」

テオは美的感覚も優れているようで、お皿の上には綺麗に盛られた焼きそばが湯気を上げている。

つやつやと光るソースの上に、鰹節や青のりが欲しいところだけれど、そういった食材は海に近い土地でしか手に入らないらしい。残念!
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