追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
ドワーフたちの元にお皿を運び、食卓で皆揃って昼食を食べる。

「なんだ、この茶色の料理は。初めて見たぞ」

「でも、いい匂いだな」

私の料理を見た人の中には、最初は警戒する人もいる。

モフィーニアの獣人系魔族の口には合うみたいなのだけれど、ドワーフはどうなのだろう。

自分のお皿に手を伸ばしつつ、横目でトルンたちの様子を窺うと、意を決した表情で焼きそばを口に運ぶところだった。

もぐもぐと無言で初酌する彼は、しばらくして目を見開く。

「んんっ! こ、これは!!」

トルンは、ドンと両手でテーブルを叩いた。

「う、うまい! 野菜や麺や肉はいつもの食材だが、このソースは今までにない味だ!! 旨辛く、それでいてしつこくなく、いくらでも食べたくなる!!」

テオも、尻尾をブンブンと振りながら焼きそばを頬張っていた。モフりたいけれど、我慢だ。
「気に入ってもらえて、良かったです」

「このソースは、どこに行けば手に入る?」

「全部私の手作りなので、どこにも売っていません」

「なら、作り方を教えて欲しい!! 秘伝の味だというなら、どこにも漏らさない。自分で食べるだけだから……」

ドワーフは頑固かつ義理堅い種族だから信頼できるという。とはいえ、私としては、ソース文化が広まって欲しいので、特にレシピを隠すつもりはない。

でも、せっかくだし、別の方向で交渉してみようかな。
< 132 / 211 >

この作品をシェア

pagetop