追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
現在、私はロープでぐるぐる巻きにされ、猿ぐつわを嵌められ、護送馬車でどこかへ運ばれている。

何がどうしてこうなったのかはわかっている。

罪人を確実に国外へ出すためとか言って、王や王太子が私を拘束するよう兵士に命じたのだ。町人と軽んじているくせに、彼らはどこかで私を恐れているみたいだった。

為す術なく捕まった私は、ポイッと馬車に放り込まれドナドナ中なのだ。

何日間か走り続けた馬車は、森にたどり着いた。

辺りは静かで人の姿もなく、森林特有の湿った空気の中、木々と土の匂いが広がる。

――ここが国境なのかな?

ようやく解放されるかと期待したけれど、そんな考えは甘かったようだ。

集まった兵士たちは、私を前にして血も涙もない相談をし始めた。

「罪人は、この森へ置いていこうか?」

ちょっと待って、私に下された処罰って、国外追放だよね!?

拘束放置プレイではないよね!?

「フガ、フガガ!」

異を唱えようにも、猿ぐつわのせいで声が出せない。

――さすがに、こんな場所に置き去りにされたら困るんですけど!

「そうだな、森に捨てておけば、魔獣が片付けてくれるだろう。陛下や殿下は、聖女様に仇をなした者を生かしておくべきではないと仰せだ」

「町人とはいえ、得体の知れない異世界人だしな。念のためか……」

「魔の森の魔獣たちなら、綺麗に食ってくれるんじゃないか?」

なんということ! 彼らは始めから森で私を始末する気だったのだ。

「フガー! フガガガ!!」

必死に助けてくれるよう訴えるけれど、やっぱり猿ぐつわのせいで声にならず、兵士には届かない。
< 14 / 211 >

この作品をシェア

pagetop