追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
悩んでいると、シリルが私の方を向いて言った。

「エマ、僕に考えがあるよ。お店のこと、解決できるかもしれない」

「……解決?」

「うん。明日の開店前に食堂へ行くから、期待して待っていて」

得意げに微笑む彼は、何か当てがあるようだった。

「ありがとうございます」

「愛するエマのためだから、なんだってやらせて欲しいんだ」

幼い頃一緒に過ごした私を、彼は家族のように思ってくれているのだろう。

家族に面と向かって「愛する」と言えてしまうのは、異世界ならではの文化かな?

「シリルは表現が大げさなんですから。弟みたいで可愛いですけど」

「弟……っ!? どういうこと!?」

シリルはショックを受けたように目を見開く。

あれ? 私、なんかまずいこと言った?

「……エマには、何回か『愛している』と告げた覚えがあるけれど、全く伝わっていない……だと……?」

打って変わって悲壮な表情になったシリルが、横でボソボソと何かを呟いている。

ややあって、彼は私の肩に両手を置き、向かい合う体勢になった。

「な、なんですか?」

「僕はエマを愛してる。好きなんだ!」

「ええと、さっきも聞きました」

「そうじゃない! ぜんぜん伝わっていなかったけど、百年前から異性として好きなんだよ!!」

今度は、私が固まる番だった。

シリルが、好き? 私を、異性として!?

彼の言葉が呪文のように、私の頭の中をぐるぐる回る。

「へ……? 嘘……? 本当に!?」

確かに、何度か言われた覚えがあるけれど、まさか、そんな意味だなんて誰が思うだろう! 私は彼のことを弟のように思い続けていたのだから!
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