追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「どんどん魔族を誘拐して来いと言われたんだ!」

「モフィーニアの情報を話せって命令された。魔王城の内部情報を欲しがっていたぞ」

「それと、聖女の情報だ!」

「そうだ。やたらと聖女を気にしていた……俺たちも『見つけ次第捕らえろ』と厳命されていた」

私は思わず眉を顰めた。

キーラン国は、まだ私を処刑する気でいるらしい。

二度と戻ることはないのだから、放っておいてくれたらいいのに。

そっと隣を見ると、シリルが美しい表情を曇らせ、誘拐犯たちに向けて質問した。

「で、君たちは、聖女についてなんと答えた?」

誘拐犯は焦った様子で答える。

「会ったこともないし、答えようもない。魔王城にいるとしか……」

「そうだ。魔王と一緒にいて、手出し不可能だと言っただけだ。表へ出てこないなら、誘拐のしようがないと……うわぁっ!」

喋った男の一人が悲鳴を上げる。

彼は見えない手に頭を掴まれ、空中に持ち上げられていた。

私はため息をつきつつ、すぐ傍の魔王に声をかける。

「シリル……」

「止めないでよ、エマ。こいつらは、エマを誘拐する気でいたんだから。私情を抜きにしても、救国の聖女を売るような奴は、この国に必要ない」

私に向けられたシリルの顔は、優しげに笑っている。けれど、彼の声はどこまでも冷たかった。
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