追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
すると、タイミング良くシリルが食堂に現れる。

「シリル、聞いてください。小さな可愛いモフモフ……げふん、下級魔族たちがキーラン国の人間にとらわれているのですよね。彼らを助けに行きたいのです!」

「駄目だ、エマを行かせるわけにはいかないよ」

「元はといえば、私の処刑が引き起こしたことです。魔族たちは私の事情に巻き込まれてしまっただけで……」

そう、私がいけなかったのだ。

記憶やスキルがなかったとはいえ、弱くて、頼りなくて、あんな家族の言いなりになっていた。疑問を持つことすらなかった。その態度が、彼らを増長させていると気づきもせずに。

自分でそこから逃げ出す方法を考えず、唯々諾々と家族の命令に従って、王子と双子の妹に簡単に陥れられ、言われるがままに連行されて。

殺される間際まで、大人しく処刑されようとしていた。

なんて他人任せで馬鹿な人間だったのか。

前世にしてもそうだ。もっと積極的に動けていれば、何かが変わったかもしれない。

自分の行いのツケを、罪のない下級魔族たちに払わせてはいけない。

シリルがなんと答えようと、私は可哀想なモフモフを助けに行くつもりだった。

だって、今度は彼らが処刑されてしまうかもしれない。あんな可愛い子たちを虐待するなんて、許せるわけがない!

私の決意を読み取ったのか、深刻な表情のシリルが私を呼んだ。

「エマ、ちょっといいかな。執務室に来て」

「わかりました」

私はシリルに連れられ、その場をあとにした。
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