追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~


気がつくと、私は何か柔らかいものの上に寝転がっていた。モフモフ、フカフカして暖かい。

視界には石造りの天井、壁には可愛い小花柄のタペストリーが……

「……って、今度はどこに来てしまったの!?」

ガバリと起き上がると、下にあるモフモフものそりと動く。

それは銀色の綺麗な中型の……

「犬……ですか?」

巨大な犬がいる。フサフサと毛艶の良い綺麗な犬だ。

「……違うよ。この美しい毛並みと尻尾は、どう見たって銀狐でしょ?」

「わあっ! 喋った!」

喋る狐は「んーっ!」と伸びをすると、グニャグニャと輪郭を崩す。

次の瞬間、目の前に細身の銀髪美少年が現れた。

長い睫毛に囲まれた大きな赤い目と、スッと高い鼻、均整の取れた体つき。

――中学生くらいかな。

びっくりして言葉も出ない私を眺めて、少年はフフンと不敵に笑った。

「あ、あの、ここはどこですか?」

森は? 魔獣は? イケオジは? なんで狐が少年に!?

疑問が多すぎて、パニックになりそうだ。

「ここは、モフィーニアの魔王城」

「魔王城!?」

どうしよう、ラスボスの本拠地ではないか!! またしても命の危機にさらされるの!?

キーラン王たちは、魔王が国を侵略してくると言って警戒していた。
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