追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~


混乱が広がる謁見室の中、拘束を解いた私はシリルを振り返った。

「キーキーと、うるさい人間だな」

リマの声を聞いたシリルが不快そうに眉を顰める。

「エマに危害を加えて……ただで済むと思うな」

いつも穏やかなシリルらしくない、低くて険しい声だった。

リマは私の魔法に脅えたのか、声も出せずに震えている。

謁見室の最奥では、国王や彼の部下が、奥に控えた兵士を呼び出していた。

「あの者たちを捕らえるのだ!! 不敬である!!」

まだ金の棒は見つかっていないみたいだ。それもそのはず。棒は今、シリルの足下にあるのだから。

……正確には、子犬姿の下級魔族が口に咥えている。小さな可愛いモフモフは、嬉しそうに尻尾を振りながらはしゃいでいた。

これらは全て、私やシリルの想定内のことだ。
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