追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
脅える私に向かって、赤い目を瞬かせた少年が微笑む。

「父上が君を運んできたんだよ。覚えていない? 縄でぐるぐる巻きにされて、国境沿いの森に倒れていたでしょう? 父上は仕事があるから、僕がお世話を任されたんだ」

「そうですか……」

「体が冷たくなって危なかったから、こうして暖めていたんだよ」

――いやいやいや、暖めていたって。布団でも掛けておいてくれたら十分なのに。

確かに、モフモフした動物の体温は温かかったけれど。

話していると、部屋の入り口から低い男性の声がした。

「シリル、客人が起きたのか?」

少年が立ち上がり、部屋の外に駆けていく。

「父上、女の子は元気そうだよ。こっちにいる」

戻ってきた少年に連れられ現れたのは、森で私を助けてくれた男性だった。

とりあえず、二人まとめて鑑定しようとした私は「ひぇっ!」と変な声を出してしまう。
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