追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
――あの人たちのことだから、絶対に私に使ってくると思ったし。

国王が金の棒を手にした瞬間、それをはたき落としたのは、リマの言っていたとおり私だ。風魔法を調節して使い、彼の手から道具が離れるようにした。

けれど、そのあと棒を奪ったのは私ではない。

小さな子犬姿のモフモフだ。下級魔族は姿こそ小さな動物だけれど、私たちの話している言葉は理解できる。

子犬姿の魔族は仲間を救出するため、私たちの作戦に協力してくれた。

だから、シリルに連れられ、謁見室の扉の隙間からこっそり中へ侵入し、玉座へ向かったのである。

小さなモフモフは部屋の隅にあるカーテンに隠れながら、無事玉座の近くへ到達した。そして、私が子犬に向かって魔法で棒を落とした瞬間にそれを拾い、素早く玉座の中へ潜り込んだのである。

私が周囲の注目を浴びている間に、子犬はカーテンの中に戻り、布と壁の間を進んで扉を開けたシリルのところに戻った。

「大活躍したあの子には、あとで特別なごちそうをたくさん作ってあげなきゃね」

子犬はシリルに金の棒を渡し、ナデナデされている。

拘束を解いた私も、お利口な子犬を抱き上げてヨシヨシした。

「皆で立てた作戦は大成功ですね」

「エマ、さっさとここを出よう。こんな場所は、君に相応しくない」

「はい、シリル」

モフィーニアの結界さえ越えてしまえば、キーラン国は私たちに一切干渉できない。
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