追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「新魔王、シリル様。戦いは終わりました。どうか、フレディオ様とエマさんの弔いを」

その場に留まり嘆くことを許さない、残酷な言葉。だが、今は必要なことだ。

混乱で息が乱れるけれど、シリルは新魔王。

犠牲になった二人の行動を無駄にはできないし、立て続けに魔王を失い不安な気持ちでいるモフィーニアの魔族の前で、情けない姿はさらせない。さらしてはいけない。

「……わかってるよ、アルフィ。生き残った上級魔族には、城へ集まるよう指示を出して。きちんとやるべきことはやるから。でも、あと少しだけ一人にさせて」

「かしこまりました」

気を遣ったアルフィが他の魔族を連れて退出し、部屋の中にはフレディオとエマ、シリルだけが残された。

「ごめん、エマ。君を愛していたのに……本当は守りたかったのに……」

そっと手を伸ばし、二度と笑いかけてくれない彼女の頬に触れる。

彼女を失った今、自分にできるのは立派な魔王になることだけだ。彼女が命をかけて守ったモフィーニアまで失うわけにはいかない。

「僕がやらなきゃ……」

シリルは二人の亡骸を前に、モフィーニアの復興と発展を誓った。
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