追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
慌てて、持っている中で一番いい衣服に着替え、血で汚れた顔や手足を拭いた。

私の服は、リマがいらなくなったお下がりばかりだけれど、汚れの落ちない使用人のお仕着せよりマシなので我慢する。

応接室に向かうと、部屋の中にはすでにリマとフィリペがいた。二人は仲睦まじく並んで座っているので、私は彼らの向かいに立つ。

挨拶すると、フィリペが厳しい表情で私を見た。

「遅い!! それに、よくもノコノコと顔を出せたものだな。この、ふしだらな浮気女め!」

「……は?」

開口一番に何を言い出すのだ、この男は。

「誰かと間違っておられませんか? 全く身に覚えがないのですが」

そもそも、私は朝から晩まで屋敷の中を駆けずり回っているので、恋愛にうつつを抜かす暇などない。外出すらろくにできないのだから。

フィリペの隣でニヤニヤ笑っているリマだって、それはわかっているはずだ。

しかし、彼女は何も告げず、フィリペは怒り続けている。

「とぼけるな! 証拠は挙がっているんだ!」

「しょ、証拠? と、言われましても……私、何もしていませんし」

「お前は不貞を働いていた上に、それを諫めた妹のリマに暴行を加えただろう」

「ええっ!?」

まさか、証拠って、リマの証言だけなの!?
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