追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「そして、あろうことか永遠の敵国である魔族の国、モフィーニアと通じて俺の茶に毒を盛った。これを見ろ!」

フィリペは自分の前に用意されていた紅茶をカップに注ぐ。カップはいつも使用している陶器製のものではなく、この日に限って銀製のものだった。

――こんなカップ、うちにあったっけ?

紅茶が注がれると、銀食器の色が黒く変色する。

「ほら! これが証拠だ!」

勝ち誇ったように、フィリペがドヤ顔でカップを指さした。

「いや、証拠と言われても……その紅茶を用意したのは私じゃありませんし」

証拠として提示するには、内容がお粗末すぎるのではなかろうか。

私が紅茶を淹れた瞬間を見た目撃者もいない上に、この日に限って銀食器が使われているのも変。それに、紅茶を運んできたのは別の使用人だから……その人が毒を仕込んだ可能性もあるのでは?

それに、人間は魔族の国への行き来ができない。

キーラン国と魔族の国との間には、決して破ることのできない巨大な結界が張られているのだ。魔族の国々へ行こうと思ったら、まず、この結界を突破しなければならない。

屋敷から出ない私が魔族に接触するのは不可能なんだけどな。
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