翠玉の監察医 アイネクライネ
蘭は、とりあえず今はこの教室から出ることを考えることにした。そのためにまず、相手の持っている武器を予想する。

銃には有効射的距離というものがある。簡単に説明すると、発射した弾を命中させる効果を最大限に発揮できる最大の距離のことだ。その距離は銃の扱いの腕前、銃の種類によって異なってくる。

向かいの建物といっても、かなりの距離がある。このことから察するに、相手の持っている銃は軍人や特殊部隊が活用する長距離用の銃を使用しているのだろう。殺傷能力も一般人が護身用で買う銃とは桁違いだ。

しかし、どんなに殺傷能力が高い銃であろうと、有効射的距離から離れてしまえば問題はない。蘭は、未だに自信が覆い被さっている子どもの肩を叩いた。

「私が合図をしたら立ち上がらず、匍匐前進で進んでください」

「む、無理!そんなの無理だ!俺たち、ここで殺される!!」

子どもは体を震わせ、泣きながら首を横に振り続ける。蘭は冷静なまま子どもにそっと触れた。
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