翠玉の監察医 アイネクライネ
鞭を振り下ろされる早さは先ほど避けた銃弾のようだ。しかし、蘭は表情を変えることなく鞭を避け、また振り下ろされないように鞭の先を素早く手に持つ。

「へえ、それでどうする気だい?」

男はまるで蘭が持つ強さを知らないようだ。余裕の笑みを浮かべている。蘭は鞭を掴んだまま男に向かって走り出す。

「馬鹿な子。鞭はもう一つあるんだよ」

男は隠し持っていた鞭を取り出し、ニヤリと笑う。その鞭は蘭が掴んでいるものよりとても短いが、鞭の先に鋭利な刃物が取り付けられており、肌に当たれば肉が裂けてしまうだろう。

しかし、蘭は恐れることをしなかった。アーサーの仲間ならばこういった状況もあり得ると最初から予想していたからだ。

男が振り下ろす短い鞭を避け、蘭は男の手を思い切り蹴り上げる。男は衝撃で短い鞭を離し、その隙に蘭は緩んだ男の手からもう一本の鞭も奪い取った。

「私はこの方々を逃さなくてはなりません。なので、あなたとの戦いはここで終わらさせていただきます」
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