翠玉の監察医 アイネクライネ
圭介が蘭を見つめる。蘭は首を横に振り、ドアの前に立った。

「危険です。なので、私が開けます」

「わかりました」

蘭は深呼吸をし、ドアの向こうの様子を伺う。大勢の人の気配を感じる。恐らく武器を所持しているだろう。蘭や圭介が持っているものより殺傷能力が高いものの可能性が高い。

ここに一歩入った瞬間に銃弾が飛んでくるかもしれない。しかし、アーサーから星夜の居場所を聞いて助け出さなければならない。彼は自分の命よりもずっと大切な人なのだから……。

蘭は素早くドアを開け、銃を構えた状態で体育館の中へと入る。刹那、体育館にいた何十人もの男たちがライフル銃を蘭と圭介に向ける。圭介は息を飲んだが、蘭は無表情のまま体育館の中央を見つめていた。

体育館の中央に、黒いマントを羽織ったアーサーが立っている。アーサーがいる場所にはスポットライトが当てられ、まるで劇を見ているかのように見えた。

「戦闘の技術は衰えてなかったみたいだな。あのガキどもを逃がせたことは褒めてやるよ」
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