翠玉の監察医 アイネクライネ
「……その目じゃ無理そうだな。俺と同じ組織の一員になるのは」

アーサーはそう言い、エメラルドのブローチを空中に放り投げて遊び始める。蘭は「やめて」とは言わず、アーサーからどうすればブローチを返してもらえるかを考えていた。

「動くな!!警察だ!!」

どれほど時間が経っていたのだろうか。体育館のドアが開き、武装した警官が大勢現れる。アーサーに銃口が向けられていた。

「神楽さん、もう安心してください」

圭介がそう言い、蘭はチラリと彼を見る。あとはアーサーを逮捕するだけだからか、圭介の顔には余裕の笑みがあった。

「簡単に捕まってたまるかよ!!」

アーサーは一瞬俯いて笑った刹那、服のポケットから筒状の何かを取り出す。蘭は一瞬でそれが発煙筒だと理解した。このままでは逃げられてしまう。

「逃がしません!!」

蘭はそう言った後、アーサーの懐へと飛び込むようにして走っていく。圭介たちには蘭の俊敏な動きが見えていないだろう。

蘭とアーサーは揉み合い、アーサーの手から落ちた発煙筒が白い煙を吐き出す。警官たちが混乱する中、蘭はアーサーを放すことは決してなかった。

「これで戦いは終わりです、アーサー」

煙が消えた後、蘭は無表情で言った。アーサーの片方の手には手錠がかけられており、もう片方は警官の手にかけられている。これで逃げようにも逃げられない。蘭が煙の中で行ったのだ。
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