翠玉の監察医 アイネクライネ
「星夜さん……?」

蘭の声が震える。星夜はずっと閉じていた目を開け、涙をその目に浮かべながら「おはよう」と声をかけてきた。蘭は涙をこぼしながら、星夜の手を取った。

「星夜さん、ずっとずっとお逢いしたかった……!」

「うん、僕もだよ。蘭にまた逢えて嬉しい」

「私……私……」

「うん、もう大丈夫だから」

幼い子どものように頼りなく蘭は泣きじゃくる。人前でこんなに泣くのは初めてかもしれない。それでも、星夜の目は優しいままだった。

蘭は泣きながら人の命を奪ってしまったこと、日本の世界法医学研究所で働いていること、全てを隠さずに話した。恐ろしいことを話しているというのに、星夜の目は優しいままで、蘭はどうしてか訊ねたくなる。

「……まだこのブローチ、持っていてくれていたんだね」

蘭の胸元につけられたブローチを見て、星夜が微笑む。蘭は「もちろんです。星夜さんからいただいたものですから」と答えた。朝日に照らされ、エメラルドが煌めく。
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