翠玉の監察医 アイネクライネ
気が付けば、蘭は星夜に抱き締められていた。互いの心音が伝わってくる。抱き締められるなど久々で、蘭は顔を赤く染めていた。

「せ、星夜さん……」

蘭は強く抱き締められ、星夜に頭を撫でられる。そして耳元で優しく囁かれた。

「蘭が罪人なら僕も罪人だ。愛している人を一人にさせてしまった。その罪を君の隣にいて償うよ」

愛してる、そう何度も言われて蘭は涙をこぼす。そして体が離れた後、蘭は星夜をまっすぐ見つめて言った。

「星夜さん、私は愛というものがまだわかりません。でも、私はーーー」

あなたのそばにいたいと心の底から思っています。

そう蘭が言った刹那、星夜との距離がゼロになる。初めて重なった優しい唇に、蘭は微笑んだ。



愛を伝え合う星夜と蘭を、病室の外から圭介が見つめていた。その顔は優しい表情だ。

「失恋、しちゃったな」

蘭のことがずっと圭介は好きだった。仕事熱心な美しい彼女に、圭介は心を奪われていたのだ。
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