翠玉の監察医 アイネクライネ
でも私は、私の命よりもずっと大切な人を見つけてしまったのです。その方は私にとって一筋の光です。全てを失った私に、手を差し伸べてくれた。他人の優しさを、温もりを初めて私に教えてくださったのです。

どうか、お願いです。私の一番守りたい方が生きていらっしゃったのならば、皆さんの仲間に入れてもらえませんか?その方は私よりも人の心を理解しております。きっと、多くの声を聞いて真実へと導いてくれるでしょう。

私のことは忘れて、笑って生きていってください。人は泣いている顔よりも笑っている方がいいと母が仰っていました。私は無表情で過ごすことが多かったですが、皆さんの笑顔が好きでした」


ペンを走らせる蘭の手がピタリと止まる。蘭は今、驚いていた。こんなにも感情が乱れているのが初めてで、戸惑っている。

蘭の目の前はぼやけ、頬を温かい涙が伝っていた。死ぬことを覚悟しているというのに、色々な感情や涙が押し寄せ、邪魔になっていく。
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