獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「すまんすまん、昨日の深酒で寝過ごしちま……って、なんだ? これから向かうのは、通夜じゃねぇよな?」
「遅い! 出発時刻はとうに過ぎている、さっさと乗れ」
「ガブリエル様、待ってましたぁ!」
 マクシミリアン様は牙を剥いてギンッと鋭く睨みつけ、私は重たい空気を変えてくれる救世主がやって来たとばかりにキラキラしい目で迎えた。
「……お前ら、一体なんなんだよ?」
 ガブリエル様は物凄く怪訝な目をして、ややへっぴり腰で車内に乗り込んだ。
 そんなこんなで馬車は三者三様の思いを乗せ、市場に向けてカタカタと走り出した。

 向かった朝市は数多の食材を扱う商店が立ち並び、それを求める人々でにぎわっていた。
「ここはヴィットティール帝国の台所とも呼ばれている。我が国最大の市場だ」
「ほう! こんなに多くの店が軒を連ねているのか」
 先導するマクシミリアン様が説明すると、ガブリエル様は活気のある市場に目を見張り感嘆の声をあげた。
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