獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
『ヴィヴィアン様。ペアダンスであなたのリードを受けて、背中に羽でも生えたように軽やかに踊れました。正直、こんな感覚は初めてです。私たちはいつでもあなたを歓迎いたしますわ。もし心境の変化があれば、再考してくださいませ』
 共に舞ったヒロイン役の女優さんが柔らかに微笑む。
『私も君を歓迎する。ヴィヴィアン殿には演者以外にも演出や振付、いろいろな才がありそうだ。だから極論を言えば、老いて近習をリタイアした後の選択肢のひとつでいい。うちはいつでも、君に門戸を開いているよ』
 オリバーさんは熱の篭もった眼差しで、私を有頂天にさせるこんなに嬉しい言葉を送ってくれる。
 多分なリップサービスが含まれているにしても、まさか『リタイアした後の選択肢のひとつでいい』とまで言ってもらえようとは……。
 本当に我が身に余る。だけど優しさの詰まったそれは、確実に私の胸を熱くする。
『皆さん、ありがとうございます。僕は今日、こうして皆さんと同じ舞台を踏み、同じ時間と感動を共有できたことを光栄に思います。……本当に、ありがとうございました』
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