獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

『初めからお前のことは面白い奴だと思っていた。マクシミリアンが色めいた目をお前に向ける姿を囃し立て、笑ってもいた。だが、お前が女ならば話は別だ。俺とアンジュバーン王国に来い。そして俺の妻になれ』
　なっ!?
　一瞬、言われたことの意味が理解できなかった。けれど一拍の間を置いて理解が下りてくれば、ふつふつと胸に怒りが湧き上がる。
　もう、ガブリエル様の面白がるような目も恐ろしいとは思わなかった。
『お前が俺のものになるのなら、即時の国交樹立を約束しよう。どうだ？』
　ガブリエル様は笑みを刻んだまま掴んだタオルを放ると、その手を私の頤にかけてクイッと上を向かせ、一国の王としてあり得ない言葉を続ける。
『ふざけないで！　あなたの発言は私やマクシミリアン様はもちろん、アンジュバーン王国民をも侮辱しているのですよ!?　そんなあなたの戯言など、まともに取り合うのも馬鹿馬鹿しい！』
　聞くに堪えず、気づけばガブリエル様の手を払い叫んでいた。