獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 これは、星空の下で酒を酌み交わすふたりを見ていて思ったことだ。
 私の指摘に、ガブリエル様は僅かに目を見開いた。
『正直、ガブリエル様が先におっしゃった『マクシミリアン様が色めいた目を私に向ける』という発言は理解し兼ねるのですが、マクシミリアン様が近習として仕える私に心を砕いて重用してくださっているのは事実だと思います。言い方は悪いですが、私にはガブリエル様がそんなマクシミリアン様の愛用品を横取りしようとしているように思えてなりません』
 ガブリエル様はきっと、ライバルが得たそれと同じものを、自分も手に入れたくなったのだ。
『はははっ! その例えは面白いな。マクシミリアンの愛用品を奪ってやろう、か。……ふむ、考えたこともなかったが、もしかすると俺の深層にはそんな心理もあるのかもしれん』
 ガブリエル様はカラカラと笑った後、一定の納得を示した。
『では、切欠は『マクシミリアンへの反骨心が言わせた』でいいだろう。しかし今の例えを聞いて、ますますお前を連れて行きたくなった。俺の妃は、やはりお前だ!』
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