獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「ふふっ、謙遜だよ。僕ね、君には人を惹き付ける不思議な魅力があると思うんだ。かく言う僕だって、君のことが大好きだもの」
 そう言ってハミル殿下は、甘えるように私の肩にコテンと頭を寄せた。
 わぁああ~っ! その動作でハミル殿下のモフモフの虎耳がファサッと頬を掠め、極上のモコフワ質感にひとりバクバクと高鳴る鼓動を抑えながら身悶える。
 さらにハミル殿下が若干前屈みの体勢になったことで、耳とお揃いの虎柄尻尾が背凭れとの隙間を通って私の方にパッタンと巻き付いてきた。
 あぁあぁ~っっ!! もふんっ、もふんっ、と背中で蠢く魅惑のモコフワに辛抱堪らなくなった。
「あの、ハミル殿下! ご無礼を承知でお願いします。ちょっとだけお耳と尻尾を撫でさせてもらえませんか!?」
「全然いいけど、耳と尻尾なんて触って楽しいの?」
 ハミル殿下は勢い込んで願い出る私を不思議そうに見上げ、コテンと首を傾げた。
「楽しいどころではありません! それはもう、最高に夢心地になれちゃいます!」
< 236 / 320 >

この作品をシェア

pagetop