獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「マクシミリアン様、ご報告いたします」
私が振り返るのと、扉から焦った様子のカロスさんが飛び込んでくるのは同時だった。
……え!? 皇宮で見る侍従長としての姿とは異なる、カロスさんの触れれば切れそうな研ぎ澄まされた雰囲気に驚く。彼は私を一瞥すると、その目に安堵を滲ませて細くした。
目が合ったのはほんの一瞬。カロスさんはすぐにマクシミリアン様に目線を移してしまったけれど、それはたしかに私がよく知る理知的で穏やかな彼の眼差しだった。
「なにがあった」
「主寝室にて皇太后陛下のお身柄を確保いたしました。しかし、離宮内を隈なく捜索しましたが、ハミル殿下のお姿が見当たりません。なお、皇太后陛下もハミル殿下の所在不明の事実をご存知なかったようで、たいそう取り乱しておられます。状況的に見て、ハミル殿下がご自身で離宮を出られたのは間違いないかと」
……ハミル殿下の行方が知れない?
耳にして、指先からスーッと血の気が引いていく。マクシミリアン様に負けず劣らず追い詰められているのはハミル殿下も同じだ。
私が振り返るのと、扉から焦った様子のカロスさんが飛び込んでくるのは同時だった。
……え!? 皇宮で見る侍従長としての姿とは異なる、カロスさんの触れれば切れそうな研ぎ澄まされた雰囲気に驚く。彼は私を一瞥すると、その目に安堵を滲ませて細くした。
目が合ったのはほんの一瞬。カロスさんはすぐにマクシミリアン様に目線を移してしまったけれど、それはたしかに私がよく知る理知的で穏やかな彼の眼差しだった。
「なにがあった」
「主寝室にて皇太后陛下のお身柄を確保いたしました。しかし、離宮内を隈なく捜索しましたが、ハミル殿下のお姿が見当たりません。なお、皇太后陛下もハミル殿下の所在不明の事実をご存知なかったようで、たいそう取り乱しておられます。状況的に見て、ハミル殿下がご自身で離宮を出られたのは間違いないかと」
……ハミル殿下の行方が知れない?
耳にして、指先からスーッと血の気が引いていく。マクシミリアン様に負けず劣らず追い詰められているのはハミル殿下も同じだ。