獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「ところで兄様、ガブリエル国王陛下の来訪では皇宮での歓迎式典や舞踏会の他にも、我が国の見どころを案内して回るんでしょう? どこを案内するか、もう決めてるの?」
 ハミル殿下はけろっとしたもので、早速話題を次に移す。
 そうして殿下が振ったのは、今、ヴィットティール帝国民皆がもっとも関心を寄せているホットな話題だった。
「国立研究所とヴィットティール帝国歴史記念館、それからヴィットティール帝国歌劇団の観劇に招待しようと思っている。他にも、陛下のご希望があれば国立公園や市場など国民生活に根差した場所も臨機応変にご案内する予定だ」
 ……へぇっ! ヴィットティール帝国歌劇団の観劇かぁ!
 候補にヴィットティール帝国歌劇団と聞かされて私は目を輝かせた。
 ヴィットティール帝国歌劇団は、我が国のみならず近隣諸国にも名を轟かせる名門の劇団だ。その分、チケットの争奪戦は激しく、地方領にあってその入手など夢のまた夢。私も幼少期からいつか観たいと望みながら、これまで叶えられずにいたのだ。
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