獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「へぇ~、どこも我が国を代表する最先端の施設や名所ばかりだね。僕はどこも慣れちゃったけど、初めて我が国を訪れるガブリエル国王陛下にはきっと新鮮だね」
 ……なんと、ハミル殿下は慣れるほどヴィットティール帝国歌劇団の観劇に行っているのか。正直、ものすごく羨ましい。
「ヴィヴィアン、どこか興味のある場所でもあったか?」
「え!?」
 突然隣から問われ、ビクンと肩が跳ねる。
 ガバッとマクシミリアン様を仰ぎ見れば、彼はこんなふうに続けた。
「なに、お前がキラキラと目を輝かせていたからな。てっきり候補の中に行ってみたい場所でもあったのかと思ったが、違ったか?」
 っ、なんてことだ! 私ってばひと目でそれと気づかれるって、どんだけ物欲しそうな顔をしていたのよ!? 恥ずかしすぎる――っ!
「おっしゃる通り以前からヴィットティール帝国歌劇団に興味があったもので、つい……。す、すみませんっ」
 白状するも、あまりの情けなさに最後は小さくなって頭を下げた。
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