獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「謝ることはない。ガブリエル国王陛下をお招きする際はお前も同行するといい。その日は劇場ごと貸切っての公演だから、ちょうどいい」
「いいんですか!?」
 まさか、貸切公演に同行を許された! 期待と興奮に、胸が鳴った。
「いいもなにも、お前は俺の近習だろう。それに以前から興味があったと言うくらいだ。歌劇団について詳しいのだろう? 劇の見どころや演者についての情報などをお伝えできれば、きっとガブリエル国王陛下も喜ぶだろう。お前も一緒に、国王陛下をもてなしてくれ」
 実際に生で観劇したことはないが、ヴィットティール帝国歌劇団の情報誌はあまさずチェックしていた。だから当然、演目や役者さんについての知識は十分ある。だけど、こういった場合は……。
「観劇はぜひ、ご一緒させていただきたいです。けれど国王陛下への説明は、役者さんにお願いするのがお勧めです」
「役者にだと?」
 前世で劇団にいた時も、ビップが観劇する際に役者が案内役につくことがあったが、これがかなり好評だった。
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