獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

「はい。ヴィットティール帝国歌劇団の今公演では、主演男優の相手役ヒロインがWキャストで組まれています。当日、休演にあたっている女優さんに案内役をお願いできれば、見どころなどこれ以上ない臨場感を持って伝わりますから」
「なるほど。役者に直接案内を頼むというのは考えてもみなかったが、なかなかいいアイディアだ」
　マクシミリアン様は感心した様子で頷いている。かつての実体験が役に立ち、私も嬉しくなった。
「きっと喜んでいただけると思います」
「よかったね、ヴィヴィアン。……それにしても兄様ってば、ヴィヴィアンのことをよく見てるんだね。僕はヴィヴィアンが観劇に行きたがってるなんてちっとも気づかなかったよ」
「いや！　なに！　ふと横を見たらヴィヴィアンが物欲しげにしているのに、なんとなく、たまたま、偶然、気づいただけだ！」
　っ!!　そんな、物欲しげって……ぅ、うっ、うぁぁああ――。
　穴があったら入りたいっ!!
「兄様ってば、なにをそんなに強調してるのさ？　へんなの」
「あ、いや。……うむ」