獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
形骸化し本来の機能を失った虎耳や尻尾は、今となってはただのお飾りだ。そんなものの有無に、人はいつまで振り回されながら生きていくのか。
……しかし、そんな馬鹿らしいものにもっとも人生を振り回されているのは、他でない俺だ。
「……はぁ。いかんな」
母と会うたびにこうも心掻き乱されているようでは、俺もまだまだだ。重く絡まる思考を振り払うように、緩く首を振る。
美しく整えられた花壇の花々も、ささくれだった今の心には響いてこない。俺は花壇の前を通り過ぎ、木々が茂る中庭の奥へと足を向けた。
美しい花々も悪くはないが、俺は昔から木々を見るのが好きだった。
派手な花や実を付けずとも、緑の葉を茂らせて真っ直ぐに上に伸びる。その潔さがよかった。
萌ゆる木の葉の下で大きくひと呼吸ついたその時、中庭を一陣の風が吹き抜けて、俺のターバンをはためかせた。
清涼とした風は火照った頬に気持ちいいばかりでなく、雑多とした思いまで一緒に押し流していくようだった。
……あぁ、心地いい風だな。
……しかし、そんな馬鹿らしいものにもっとも人生を振り回されているのは、他でない俺だ。
「……はぁ。いかんな」
母と会うたびにこうも心掻き乱されているようでは、俺もまだまだだ。重く絡まる思考を振り払うように、緩く首を振る。
美しく整えられた花壇の花々も、ささくれだった今の心には響いてこない。俺は花壇の前を通り過ぎ、木々が茂る中庭の奥へと足を向けた。
美しい花々も悪くはないが、俺は昔から木々を見るのが好きだった。
派手な花や実を付けずとも、緑の葉を茂らせて真っ直ぐに上に伸びる。その潔さがよかった。
萌ゆる木の葉の下で大きくひと呼吸ついたその時、中庭を一陣の風が吹き抜けて、俺のターバンをはためかせた。
清涼とした風は火照った頬に気持ちいいばかりでなく、雑多とした思いまで一緒に押し流していくようだった。
……あぁ、心地いい風だな。