ささやきはピーカンにこだまして
 でも、ふわふわする気分はネットに向き直ったとたんに消滅。
 (じゅん)がわたしをにらんでいた。
「ぼくの貴重な時間を、わたくしごとでつぶさないでください」
「…………」
 いつになく幸せな気持ちの反動で、ふつうに聞く倍はその言葉にむっとした。
 もちろんそれは顔に出たらしく、準もにらみ返してくる。
 わかった。
 上等だ。
「そんじゃ、始める」
「――――はい」


 再開したノックは最初からテンションが高くて。
 わたしがいじわるに左右に振るショットを、準は5本に1本はオフェンスポジションに持ちこんで、体重を乗せたスマッシュにしてわたしの喉元に返してきた。
「小松せんぱーい、見てあれ」
 倉庫から出てきた二紀(にき)が、大げさに肩をすくめるのがチラッと見えた。
「あれって、バトルだよね。気がしれないや」
八木(やぎ)ってサドだから。向いてるよな、コーチ」
「やかましい!」
 言い返しながらラケットで必死のカバー。
 今のは…ちょっと。
 くそ。
 やってくれるじゃないのっ!
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