ささやきはピーカンにこだまして
「も、行こ、行こ。ぼく腹ペこだよ、先輩」
「そーな。弁当は味わって食べないとな」
 ええい、もう。
 早弁組を、さりげなくディスったな。
 わたしがどんなに恥ずかしい思いをして、3時間目のあと、さわがしい教室で、みんなに冷やかされながら10分で! お弁当を食べているか。
 毎日あんたも見てるでしょ。
 さっさと消えろ。

 ふぅ はぁ ふぅ…

 うしろでアリーナのドアが開いて。
 閉まるまでのあいだ、ちょっとひと休み。
「先輩、休憩ですか?」
 こ…のやろう。
 自分だって今日は汗だくのくせして。
 ほれっ。走れ走れ。
 思いきりいじわるしたつもりのタマは、きっちり追いつかれて。
 風を切るように引かれた右腕から、体重の乗ったスマッシュになって、わたしの胸に返ってきた。
「あ…」
 思ったときには、よろめいた足は空気を踏んでいて。
 ずっでええええええん!
 アリーナに派手な音がこだまする。
「先輩っ!」
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