ささやきはピーカンにこだまして
「…っ、たぁぁぁぁ」
 小さな悲鳴で胸につまっていた息を吐きだしたとき。
 フロアに尻もちをついたわたしの目に映ったのは、ネットをくぐってくる(じゅん)の頭。
「来ないで!」
「だって! 大丈夫?」
 だ…いじょうぶなもんか。
 ぃったぁぁぁぁい。
「先輩!」
 だから、来ないでってば。
 顔に当たるとアザができるようなタマが胸に当たったのよ?
 あと1週間で生理なのに。
 こ…の痛さ、男なんかに、わかるもんかぁぁぁぁぁ。
「先輩っ!」
「ほっといてったらっ」
 伸びてくる腕を本気ではらってやったのに。
 わたしの手の甲がぴしゃりと当たった腕は引かない。
「どこ? 手首は? 足首は? ひねってない?」
 やめて、やめて。
「い…いから、放っておいて!」
「――もうやめようよ。ぼくにはできないよ。先輩のことねらうなんて、いやだよ」
「いやだもなにも……、百発百中でもないくせに」
「…………」
 わたしもだいぶ、きみのことはわかってきたんだよ、準。
 黙らせるくらい簡単だ。
「いい? 試験中もイメージトレーニングするのよ。わたしのにくったらしい顔を思い浮かべれば簡単でしょ?」
「できない」
「なに言ってるの。これからは1年の大久保に相手をしてもらいなさい。彼くらいの身長がちょうどいいはず。やっぱり動く的じゃなくちゃね」
 立ち上がろうと思ったら、今度はおしりが痛くて。
「あたたたた」
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