ささやきはピーカンにこだまして
 紺のブレザーに白いポロシャツ。
 生成りの綿スカーフ。
 あーん、眼鏡まで練習のときとは違うんだよう。
 ただ……となりの美香キャプテンも白のポロシャツで。
 おそろいっぽいのが、ちょっとな。うん。
「じゃ、八木。最低5人ね。だめだったら特練(とくれん)だよ」
「おいおい、美香。そういうオドシは卑怯(ひきょう)だぞ」
 …っとかって。
 いいなぁ、美香先輩は名前で呼んでもらえて。

 前の3年生に、同じ佐藤さんていう名字の先輩がいて。
 1年下の佐藤 美香先輩が『美香』になったんだって。
 好きなひとに名前で呼んでもらえるって、いいよねぇ。

「小松。おまえひとりに押しつけるみたいで申し訳ない。頼むぞ」
 結城先輩が小松の肩にぽんと手をのせる。
「はい」
 小松は礼儀正しく返事をするけど、顔は真っ白だ。
「結城、それ、あたしよりオドシっぽいけど?」
 美香キャプテンの皮肉には、わたしもこっそり同意。
「そうか? おれのは純粋にエールだと思うけどな」
「そう思ってるのは本人だけよね、メーメ」
 (ははははは)
 ここで同意を求めないでくださいまし。
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