ささやきはピーカンにこだまして
「メーメェ……あんた、どういう教育したのよっ! どうにかして、あの子」
 その真澄先輩をよろけさせて、上からすごい勢いで駆けおりてきたのは門脇先輩だ。
 うわー。怒ってる。
「この1週間ケンカしっぱなし。あたしに守れっていうのよ、あの子のスケジュール。だいたいあのっ! クソ丁寧な態度が気にいらない! ジョーダンじゃないっつうの! 先輩お願いします。先輩すみません。その先に続くのは結局、命令じゃない。ばかにして!」
「…………」
 わかる。
 お気の毒に。
「でもカド先輩。あの子は、けして無茶なことを言ってるわけじゃ、ないですから――…」
 あ…れ……?
 いやだ。
 わたしってば、(じゅん)をかばってる?
「そうだよなぁ、八木(やぎ)。――聞こえたぞ門脇。おまえ、この1週間でだいぶタマに執着心がついてきたのは準のおかげじゃないか」
 階段下で待っている真澄先輩に、ちょっと手を上げて結城先輩が立ち止まる。
 ナップサックを手に提げて、グレーのセットアップスウェットに着替えているのは、外に食事に行くからだろう。
「なによ、結城まで」
 門脇先輩がツンと顎を上げて階段を駆けおりていくのを見送って、結城先輩がわたしに向き直った。
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